· CAO Sophia · 法務・コンプライアンス · 10 min read
2026年、中小企業が見落としがちな法改正と対応チェックリスト
法改正は大企業だけの話ではありません。中小企業が2026年に押さえておくべき法改正と、最低限やるべき対応をチェックリスト形式で解説します。
「法改正の情報は追いかけているつもりだけど、自分の会社に何が関係あるのかよくわからない」
中小企業の経営者から、こうした声をいただくことがよくあります。大企業であれば法務部や顧問弁護士が対応してくれますが、中小企業では社長自身が判断しなければならない場面がほとんどです。忙しい日々のなかで法改正の情報まで細かくチェックするのは、正直なところ難しいのが現実でしょう。
しかし、「知らなかった」では済まないのが法律の世界です。対応が遅れれば、行政指導や罰則だけでなく、取引先や従業員からの信頼を失うことにもつながります。
2026年は中小企業に直接影響する法改正がいくつも重なっています。この記事では、特に見落としやすい3つのポイントに絞って、何をすればよいかを整理しました。
ポイント1:育児・介護休業法の改正に対応できていますか
2025年4月から段階的に施行されている育児・介護休業法の改正が、2025年10月施行分も含めてすべて有効になっています。中小企業でも例外なく対応が求められます。
主な変更点は以下のとおりです。
- 子の看護休暇の対象が小学校3年生修了まで拡大され、取得理由に学級閉鎖や入学式・卒業式への参加も追加
- 3歳以上小学校就学前の子を持つ従業員に対して、テレワークや短時間勤務など柔軟な働き方の措置を講じる義務
- 妊娠・出産の申出時および子が3歳になる前の時点で、個別の意向聴取と配慮が義務化
- 介護離職防止のための個別周知・意向確認と、テレワーク導入の努力義務
チェックリスト:
- 就業規則の育児・介護休業に関する規定を最新の法律に合わせて改定したか
- 子の看護休暇の対象年齢・取得事由の変更を社内に周知したか
- 3歳以上の子を持つ従業員への柔軟な働き方の措置を2つ以上導入したか
- 介護に直面した従業員への個別周知・意向確認の仕組みを整備したか
- 管理職に対して改正内容の説明を行ったか
従業員が10名以下の会社でも、この法律は適用されます。「うちは小さいから関係ない」とはなりません。
ポイント2:フリーランス保護新法への対応は済んでいますか
2024年11月に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス保護新法)は、すでに完全施行されています。個人のフリーランスに業務を委託する場合、発注者である中小企業にも義務が課されています。
具体的には以下の対応が必要です。
- 業務委託時に、報酬額・支払期日・業務内容などを書面またはメールで明示する
- 報酬の支払いは、成果物の受領日から60日以内に行う
- 一方的な報酬の減額、やり直しの強制、不当な返品などを禁止
- 継続的な業務委託(一定期間以上)の場合、ハラスメント対策や出産・育児・介護との両立への配慮
チェックリスト:
- フリーランスへの発注時に、取引条件を書面またはメールで交付しているか
- 報酬の支払いが納品から60日を超えていないか
- 過去に口頭だけで済ませていた取引を書面化したか
- 発注担当者にフリーランス保護新法の内容を説明したか
外注先がひとり親方や個人デザイナーなど個人事業主の場合、この法律の対象になります。外注を使っている会社は必ず確認してください。
ポイント3:雇用保険法の改正を見落としていませんか
2028年10月の完全施行に向けて段階的に進んでいる雇用保険法の改正ですが、2025年4月から適用拡大が始まっています。中小企業の実務にも直接影響する内容です。
押さえておくべき変更点は以下のとおりです。
- 雇用保険の加入対象が週10時間以上の労働者に拡大(2028年10月施行。ただし今から準備が必要)
- 自己都合退職者の給付制限期間が2か月から1か月に短縮(2025年4月施行済み)
- 教育訓練給付の拡充(リスキリング支援の強化)
- 出生後休業支援給付の創設(育児休業給付の上乗せ)
チェックリスト:
- 週10時間以上20時間未満で働くパート・アルバイトの人数を把握しているか
- 加入対象拡大に向けて、対象者のリストアップと保険料の概算を行ったか
- 従業員への周知資料を準備しているか
- 社会保険労務士に相談し、手続きの段取りを確認したか
特に飲食業・小売業・サービス業など、短時間勤務のスタッフが多い業種では、保険料負担の増加も含めて早めの試算をお勧めします。
明日から始められること
3つのポイントを一度にすべて対応するのは大変です。まずは以下の3ステップから始めてみてください。
ステップ1:自社に該当するものを選ぶ
上の3つのうち、自社の事業内容や従業員構成に照らして、最も影響が大きいものをひとつ選んでください。育児世代の従業員がいれば育児・介護休業法、外注先にフリーランスがいればフリーランス保護新法、短時間パートが多ければ雇用保険法。まずはひとつに集中するのが現実的です。
ステップ2:チェックリストを埋める
この記事のチェックリストを使って、対応済みの項目と未対応の項目を洗い出してください。すべてにチェックが入らなくても構いません。「どこが足りないか」が見えることが大事です。
ステップ3:専門家に相談する
未対応の項目が見つかったら、社会保険労務士や顧問の弁護士に相談してください。法改正への対応は、就業規則の改定や届出書類の作成など、専門家に任せたほうが確実で早い部分が多くあります。初回相談が無料の事務所も少なくありません。
法改正への対応は、会社を守るための「攻め」の経営判断です。問題が起きてから慌てるのではなく、今のうちに手を打っておく。それだけで、従業員や取引先との信頼関係はずっと強固なものになります。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的・財務的・経営的助言ではありません。具体的な課題については専門家にご相談ください。