· CEO Alex 経営戦略 · 10 min read
生成AIを使う企業は86.4%、それでも27.0%は「組織的な取組はない」——差がついた場所
総務省の令和8年版情報通信白書によると、日本企業の86.4%が何らかの業務で生成AIを利用する一方、27.0%は「組織的な取組はない」と回答しました。中小企業ほどその割合が高く、鍵は経営幹部の関与です。経営の視点で数字を読み解きます。
※ 本記事は2026年8月15日時点の公開情報に基づきます。最新情報は各社公式発表等をご参照ください。
総務省が2026年7月に公表した令和8年版情報通信白書は、特集を「AIの進展がもたらす多面的影響〜人間とAIが健全に協働するデジタル社会の実現に向けて〜」と題し、日米独中4か国の企業調査を収録しています。生成AIの活用方針を尋ねた設問で「わからない」と回答した対象を除いた集計で、自社の何らかの業務で生成AIを利用していると回答した日本企業の割合は86.4%。白書は「2024年度企業向け調査に比べて大幅に上昇し、今回調査した他の3か国との差も縮まる結果となった」と記しています(出典: 総務省 令和8年版情報通信白書)。使っているかどうかで各国に後れを取る局面は、ひとまず終わりました。
使ってはいる。ただし「組織的な取組はない」が27.0%
同じ白書に、対になる数字が並んでいます。活用方針の設問で「利用を禁止している」と回答した対象を除いたうえで、生成AIによる業務変革等に関する組織的な取組状況を尋ねたところ、全社横断・部署単位・個人業務単位のいずれかで組織的に取り組んでいる割合は65.6%。一方で「組織的な取組はない」と回答した割合は27.0%と約3割に上り、「米国・ドイツ・中国に比べて顕著に高い結果となった」と明記されています。さらに、この割合は中小企業で特に高い傾向が示されました(出典: 総務省 令和8年版情報通信白書)。
86.4%と27.0%。この2つが同居しているのが、いまの日本企業の実像です。現場が個々に使っている状態を、会社として使っている状態と読み違えると、経営判断を誤ります。
方針は上がった——大企業74.0%、中小企業58.1%
前提となる方針の側も見ておきます。生成AI活用の方針について「積極的に活用する方針である」「活用する領域を限定して利用する方針である」の合計は、日本で68.9%。前年度調査の49.7%から大きく上昇しました。企業規模別では、大企業74.0%、中小企業**58.1%**で、白書は「特に中小企業において大きな上昇が見られた」としています(出典: 総務省 令和8年版情報通信白書)。
方針は決まり、利用も広がった。残った差は、方針と利用のあいだをつなぐ「組織としての取り組み」にある、という構図です。
中小企業の鍵は、トップの関与だと白書が名指ししている
白書はさらに踏み込んでいます。日本の中小企業では、戦略や方針の状況として「経営幹部から各部署に対して実施事項や達成目標が提示されている」が最も高い回答割合となり、「中小企業におけるAI活用については、トップダウンの関与がキーポイントとなっていることがうかがえる」と結論づけています(出典: 総務省 令和8年版情報通信白書)。
これは経営者にとって、都合のよい話ではありません。ツールの選定でも、担当者の熱量でもなく、経営幹部が目標を出したかどうかが分かれ目だと名指しされているからです。裏を返せば、追加投資なしで打てる手が経営の側に残っているということでもあります。
中小企業への翻訳——「どの業務を、いつまでに、どれだけ」を出す
白書は、日本で活用が進んだ業務類型として「議事録・メール作成補助」が約7割、「営業・販売」が約6割、「社内ヘルプデスク」が約5割を挙げ、導入効果を実感する割合は「議事録・メール作成補助」が約7割で他の類型に比べて顕著に高いと報告しています(出典: 総務省 令和8年版情報通信白書)。効果が出ている場所は、すでに分かっています。
経営が今週出せる指示は3つです。
対象業務を名指しする。 「AIを活用せよ」ではなく「議事録と一次回答の作成を対象にする」。範囲を絞るほど、現場は動けます。
達成目標を数字で出す。 「月内に対象業務の8割で使う」「1件あたりの作成時間を半分にする」。白書が中小企業の鍵とした「実施事項と達成目標の提示」は、この一行のことです。
報告の場を決める。 月1回15分で構いません。使われた回数と、うまくいかなかった業務を挙げてもらう。取り組みが「組織的」になるかどうかは、この場があるかどうかで決まります。
まとめ
- 令和8年版情報通信白書によれば、活用方針に「わからない」と答えた対象を除く集計で、日本企業の86.4%が何らかの業務で生成AIを利用。2024年度調査から大幅に上昇し、他の3か国との差も縮まった
- 一方で「組織的な取組はない」との回答は27.0%と約3割に上り、米国・ドイツ・中国に比べて顕著に高い。この割合は中小企業で特に高い
- 生成AI活用方針を持つ企業(積極活用+領域限定の合計)は日本で68.9%(前年度49.7%)。大企業74.0%、中小企業58.1%で、特に中小企業の上昇が大きい
- 白書は中小企業のAI活用について「トップダウンの関与がキーポイント」と結論づけている。対象業務・達成目標・報告の場という3点の提示は、追加投資なしで経営が打てる手
導入率で他国に並んだ今、差がつくのは経営の関与です。使ってよいと許可することと、どの業務でいつまでに何を実現するかを示すことは、まったく別の行為です。前者は現場の自由を広げますが、後者がなければ成果は組織に積み上がりません。AIを事業の成果に変える最後の一手は、経営が握っていると私たちは考えます。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的・財務的・経営的助言ではありません。具体的な課題については専門家にご相談ください。