· CHRO Emma · 人事・組織 · 9 min read
人手不足倒産が過去最多——採っても辞める会社の根本原因
2025年上半期の人手不足倒産は214件で過去最多。採用しても定着しない会社に共通する根本原因と、今日からできる改善策を解説します。
「求人を出して、面接して、やっと採用できたと思ったら半年で辞めてしまった」。こんな経験をお持ちの経営者は、決して少なくないのではないでしょうか。
帝国データバンクの調査によると、人材確保・育成を経営課題に挙げる企業は60.3%にのぼります。さらに2025年上半期の人手不足倒産は214件で過去最多を更新しました。人が採れない、採れても辞める。この悪循環に苦しむ中小企業が増え続けています。
しかし、離職が止まらない会社には共通するパターンがあります。そしてそのほとんどは、大きなコストをかけなくても改善できるものです。今回は、採っても辞める会社に共通する3つの根本原因と、その対策についてお伝えします。
1. 「入社前のイメージ」と「入社後の現実」にズレがある
離職の原因として最も多いのが、入社前後のギャップです。面接ではいい話ばかりを伝え、入社してみたら実態が違っていた。これでは、どんなに優秀な人を採用しても定着するはずがありません。
よくあるのは、「残業は少なめです」と伝えておきながら実際は毎日2時間の残業が当たり前だったり、「幅広い業務に携われます」と言いつつ単調な作業ばかりだったりするケースです。会社側に悪気はなくても、現場の実態と採用時の説明がずれていることは珍しくありません。
対策はシンプルです。面接の段階で、仕事の大変な部分も含めて正直に伝えることです。「繁忙期は残業が増えます」「最初の半年は地味な業務が中心です」。こうした情報を事前に伝えると応募者が減るのではと心配される方もいますが、実際にはむしろ逆です。正直に伝えた上で入社を決めた人のほうが、覚悟ができている分、長く続きます。
面接に現場の社員を同席させるのも効果的です。経営者だけでなく、一緒に働くことになる人の声を直接聞くことで、候補者は入社後の生活をより具体的にイメージできるようになります。
2. 入社後の「放置期間」が長すぎる
2つ目の原因は、入社してからのフォロー不足です。中小企業では、入社初日から「とりあえずやってみて」と現場に任せてしまうことがよくあります。
新しい環境に飛び込んだ人は、最初の1〜3ヶ月が最も不安な時期です。仕事の進め方がわからない、誰に聞いていいかわからない、自分が期待されていることがわからない。こうした不安が積み重なると、「この会社は自分には合わないのかもしれない」という気持ちに変わっていきます。
ここで大切なのは、立派な研修制度を作ることではありません。「最初の1週間で覚えてほしい業務はこれです」「困ったらまずこの人に聞いてください」「月に1回、上司と振り返りの時間を取ります」。こうした最低限の仕組みがあるだけで、新入社員の安心感はまったく違います。
特に効果が高いのは、入社1ヶ月目・3ヶ月目に15分でも構わないので「困っていることはないか」と直接聞く場を設けることです。問題が小さいうちに拾い上げることで、突然の退職を防ぐことができます。
3. 「この会社にいる理由」が見えない
3つ目は、将来の見通しが立たないことです。給与が上がる道筋が見えない、この先どんなスキルが身につくのかわからない、会社がどこに向かっているのかわからない。こうした状態が続くと、人は「ここにいても仕方がない」と感じ始めます。
大企業のような細かなキャリアパスを用意する必要はありません。ただ、「1年後にはこういう仕事を任せたい」「この業務ができるようになったら給与はこのくらいになる」といった、ざっくりとした見通しを伝えるだけで十分です。
もうひとつ大切なのは、会社の現状と方向性を社員に共有することです。経営者の頭の中にだけある計画は、社員からは見えません。「今期の売上はこうだった」「来期はこの分野に力を入れたい」。月に1回、10分でいいので全体に向けて話す機会を作ってみてください。自分の仕事が会社のどこにつながっているかが見えると、日々の業務への取り組み方も変わります。
明日から始められること
人が辞める原因は、給与の高い低いだけではありません。「聞いていた話と違う」「放っておかれている」「先が見えない」。この3つが重なると、どんな人でも辞めたくなります。
逆に言えば、この3つに手を打てば、採用コストを増やさなくても定着率は改善できます。
まずは、直近1年で退職した方がいれば、その方が辞めた理由を振り返ってみてください。思い当たることがあれば、それが改善の出発点です。退職者がいない場合でも、今いる社員に「入社前と後でギャップを感じたことはあるか」と聞いてみるだけで、意外な気づきが得られるはずです。
人手不足の時代だからこそ、「採る」ことよりも「辞めない会社をつくる」ことに目を向けてみてはいかがでしょうか。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的・財務的・経営的助言ではありません。具体的な課題については専門家にご相談ください。