· CFO Sarah · 財務  · 8 min read

黒字倒産はなぜ起きるのか——利益が出ているのに資金が回らない構造

決算書では黒字なのに、なぜか資金が回らない。黒字倒産が起きるメカニズムと、経営者が今日から確認すべきポイントを解説します。

決算書では黒字なのに、なぜか資金が回らない。黒字倒産が起きるメカニズムと、経営者が今日から確認すべきポイントを解説します。

「決算書では黒字なのに、なぜかお金が足りない」

この矛盾に苦しんでいる経営者は、決して少なくありません。東京商工リサーチの調査によれば、倒産企業のうち約半数は直前期が黒字だったというデータがあります。利益が出ているのに会社が潰れる。これが「黒字倒産」と呼ばれる現象です。

一方で、中小企業庁の調査では約2割の中小企業が赤字体質から抜け出せないとされていますが、実は黒字の会社にも同じリスクが潜んでいます。利益の有無と、手元資金の有無は、まったく別の話だからです。

今回は、黒字倒産が起きるメカニズムを3つのポイントに整理してお伝えします。

ポイント1:利益と現金は「別のもの」

まず押さえておきたいのは、決算書の「利益」と銀行口座の「残高」はイコールではないということです。

たとえば、3月に1,000万円の売上を計上したとします。決算書にはこの1,000万円が売上として載ります。しかし、取引先からの入金が5月末だった場合、3月時点で手元にお金はありません。一方で、仕入代金や人件費は毎月出ていきます。

決算書上は「黒字」でも、実際にお金が入ってくるまでの間に支払いが重なれば、資金ショートが起きます。これが黒字倒産の最も基本的な構造です。

利益は「計算上の数字」であり、現金は「実際に動くお金」。この2つを混同してしまうと、足元の危機に気づけません。

ポイント2:売上の成長がかえって資金を圧迫する

意外に思われるかもしれませんが、売上が急に伸びたときこそ資金繰りは苦しくなります。

売上が増えれば、仕入れや外注費も増えます。人を雇えば人件費が先に出ていきます。しかし、売上の入金は1か月後、2か月後。支出は先に膨らみ、入金は後からついてくる。この時間差が、成長期の会社を追い詰めます。

特に危ないのは、大型案件を受注したときです。材料費や外注費を先行投資として支払う必要がある一方、入金は納品後になるケースが多い。受注が増えれば増えるほど、先行投資の金額も膨らみ、手元資金が枯渇するという皮肉な状況に陥ります。

「売上が伸びているから大丈夫」という安心感が、かえって危機への感度を鈍らせるのです。

ポイント3:在庫と売掛金に現金が「眠っている」

もうひとつ見落とされがちなのが、在庫と売掛金に資金が固定されているという問題です。

倉庫に積み上がった在庫は、決算書上は「資産」です。しかし、売れるまでは現金に変わりません。仕入れにお金を使っているのに、それが商品として棚に並んでいるだけでは、支払いの足しにはなりません。

売掛金も同様です。帳簿上は「資産」ですが、入金されるまでは使えないお金です。取引先の支払いが遅れれば、さらに状況は悪化します。

つまり、資産が多くても現金が少ないという状態が、黒字倒産の温床になります。在庫の回転日数や売掛金の回収日数を定期的に確認し、お金が「眠っている」場所を把握しておくことが重要です。

明日から始められること

黒字倒産を防ぐために、まず取り組んでいただきたいことが3つあります。

1つ目は、「利益」ではなく「現金残高」を毎週確認する習慣をつけることです。 月次の試算表だけでなく、週に一度は通帳やネットバンキングで実際の残高を確認してください。「今月末にいくら残るか」を常に意識するだけで、判断の精度が変わります。

2つ目は、入金と出金のタイミングを一覧にすることです。 向こう3か月分の入金予定日と支払予定日を、スプレッドシートに並べてみてください。どの週に資金が薄くなるかが一目でわかります。予兆を早くつかめれば、金融機関への相談や支払い条件の交渉も余裕を持って進められます。

3つ目は、在庫と売掛金の「滞留」を点検することです。 3か月以上動いていない在庫はないか。入金が60日を超えている取引先はないか。この2点を確認するだけでも、資金が固定されている箇所が見えてきます。

黒字倒産は、突然起きるものではありません。日々のお金の流れの中に、必ず予兆があります。決算書の数字だけでなく、実際の現金の動きに目を向けること。それが、会社を守る最も確実な方法です。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的・財務的・経営的助言ではありません。具体的な課題については専門家にご相談ください。

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