· COO Ryan オペレーション · 8 min read
社内のAIを「棚卸し」する仕組み——ServiceNowのAI Control Towerが示す統制の型
ServiceNowは2026年5月5日、AI Control Towerの拡張を発表しました。発見・観測・統制・保護・測定の5機能で、社内のどこで何のAIが動いているかを把握します。AI Control Towerの機能拡張は2026年8月に一般提供とされています。統制の型を整理します。
※ 本記事は2026年9月3日時点の公開情報に基づきます。提供状況は変化するため、最新情報は各社公式発表等をご参照ください。
ServiceNowは2026年5月5日、企業内のあらゆるシステムに配置されたAIを発見・観測・統制・保護・測定するAI Control Towerの拡張を発表しました。同社AIプラットフォーム担当のJon Sigler氏の言葉が、この製品の存在理由を端的に示しています。「導入と説明責任のあいだには大きな隔たりがある。AI Control Towerは、企業のAIスタック全体にわたる統一されたガバナンスを提供する」。AI Control Towerの機能拡張は5月にInnovation Labへ入り、一般提供は2026年8月が見込まれるとされています(出典: ServiceNow プレスリリース)。
5つの動詞が、そのまま点検項目になる
製品の構成は、規模を問わず使える点検項目として読めます。
発見(Discover)は、社内のどこにAIがあるかを見つけること。AWS、Google Cloud、Microsoft Azure、SAP、Oracle、Workdayなど30の新しい統合が用意されています。**観測(Observe)**は、稼働状況とアラートの継続的な監視。**統制(Govern)**は、モデル・データセット・プロンプトにわたるリスク評価で、NISTとEU AI法に整合する5つの新しいリスクフレームワークが含まれます。**保護(Secure)は、アクセス権限の統制と、問題時にエージェントを即時停止できること。そして測定(Measure)**は、コストの追跡と投資対効果のダッシュボードです(出典: 同上)。
この5つは、大企業向けの機能一覧であると同時に、AIを業務に入れた組織が必ず直面する順番でもあります。
「どこで何が動いているか分からない」が最初の壁
運用の観点で最も重いのは、最初の発見です。部署ごとにツールを契約し、個人がアカウントを作り、いつの間にか業務データが複数のサービスを行き来する。この状態は、統制以前に現状把握ができていない状態です。
日本でも、株式会社Merが2026年8月6日に公表した調査で、AIの「利用記録が横断的に残り、後から追跡できる」と答えた割合は**13.0%**にとどまっています(出典: 株式会社Mer プレスリリース)。導入率が上がるほど、この把握の欠落が経営上の弱点になります。
効果は数字で示されている
発表には具体的な成果も含まれます。Rolls-Royceでは1年間で38,000件のチケットを自己解決に振り替え、解決時間を34%短縮したとされ、同社のRachel Cameron氏は「ServiceNowのAIは我々のデジタル・セルフサービスを一変させた。利用はほぼ3倍になり、38,000件のチケットが自己解決された」と述べています。HDFC BankのGroup CIOであるRamesh Lakshminarayanan氏は「AI Control Towerは共通のガバナンス層であり、すべてのAIユースケースを管理する可視性を我々に与えてくれる」と語っています(出典: 同上)。
中小企業への翻訳——スプレッドシート1枚で始める
同等の製品を導入する必要はありません。5つの動詞のうち、最初の3つは表計算ソフト1枚で始められます。
発見。 社内で使われているAIサービスを全部書き出す。契約しているもの、個人が無料で使っているもの、業務システムに組み込まれているもの。ここで漏れが見つからない会社はほぼありません。
統制。 各サービスについて「顧客情報を入れてよいか」を3段階(可・条件付き・不可)で決める。1行で済みます。
測定。 月額費用と、使っている人数を並べる。使われていない契約は、この時点で必ず出てきます。
観測と保護は仕組みが要りますが、最初の3つを終えるだけで、AIの運用は「なんとなく」から「管理下」に移ります。
まとめ
- ServiceNowは2026年5月5日、AI Control Towerの拡張を発表。発見・観測・統制・保護・測定の5機能で企業内のAIを一元的に扱う。機能拡張は5月にInnovation Labへ入り、一般提供は2026年8月が見込まれるとされている
- 発見のためにAWS・Google Cloud・Microsoft Azure・SAP・Oracle・Workdayなど30の新しい統合を用意し、統制ではNISTとEU AI法に整合する5つの新しいリスクフレームワークを備える
- Jon Sigler氏は「導入と説明責任のあいだには大きな隔たりがある」と述べ、Rolls-Royceでは1年間で38,000件のチケットを自己解決に振り替え、解決時間を34%短縮した事例が示されている
- 中小企業は同等製品を入れずとも、社内AIサービスの棚卸し・顧客情報入力可否の3段階判定・月額費用と利用人数の把握という3点から着手できる
AIの統制というと、大がかりな仕組みの導入を想像しがちです。しかし実務で最初に効くのは、どこで何が動いているかを一覧にすることでした。一覧がなければ、止めることも、伸ばすことも、費用を削ることもできません。管理の第一歩は制限ではなく可視化である——この順序は、規模が変わっても同じだと私たちは考えます。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的・財務的・経営的助言ではありません。具体的な課題については専門家にご相談ください。