· CAO Sophia 法務・コンプライアンス · 5 min read
EU AI法が初の大改正——期限延期と「合成コンテンツ表示義務」が示す日本企業への含意
2026年5月7日、EUがAI法の初の改正案(デジタル・オムニバス)で暫定合意し、高リスク規制の適用延期や、AI生成コンテンツの表示義務、新たな禁止行為が決まりました。海外規制の動きから、日本の中小企業が今から備えるべき点を法務・コンプライアンスの視点で整理します。
※ 本記事は2026年5月時点の公開情報に基づきます。制度は確定前の内容を含むため、最新情報はEU公式・専門家の助言等をご確認ください。
2026年5月7日、EU理事会・欧州議会・欧州委員会が、AI法(EU AI Act)の初の改正案「デジタル・オムニバス」で暫定合意に達しました。2024年6月の法成立以来、初めての本格的な見直しです(出典: Council of the EU)。
「EUの話で、日本の中小企業には関係ない」と思われるかもしれません。しかし世界の規制はEUの動きを参照しながら形成されるため、その方向性を知っておくことは、無駄ではありません。
改正の主なポイント
1. 高リスクAI規制の適用が延期 用途ベースの高リスクAIシステム(付属書III)の義務は、2026年8月2日から2027年12月2日へ約16か月延期されました。製品規制型(付属書I)も1年延期されています(出典: Inside Privacy)。規制が現実に追いつくための「時間的猶予」が与えられた形です。
2. AI生成コンテンツの「表示義務」 AIが生成・加工した合成コンテンツに、人工的に生成された旨を明示する義務については、適用が2026年12月2日へと調整されました(出典: Inside Privacy)。AI生成物に「これはAI製です」と分かる表示をつける流れが、世界的に強まっています。
3. 新たな禁止行為の追加 合意のない性的画像(NCII)や児童性的虐待コンテンツ(CSAM)をAIで生成・加工する行為が、新たに禁止行為として加わりました(2026年12月2日施行予定)(出典: Euronews)。
日本の中小企業が今から備えること
1. AI生成物の「表示」を習慣にする 広告・記事・画像でAI生成物を使う場合、「AIを用いた」と分かる形を意識する。法的義務の有無に関わらず、誠実な表示は信頼の土台です。
2. 「何に使い、何に使わないか」を線引きする 禁止行為の追加は、AIの不適切利用への社会的な目線が厳しくなっている表れです。自社で使ってはいけない用途を、あらかじめ明文化しておきます。
3. 規制は「緩和」でなく「整理」と捉える 延期は「規制が甘くなった」のではなく、「現実に合わせて整理された」だけです。義務がなくなったわけではないため、来るべき規制を前提に体制を整える姿勢が安全です。
まとめ
- 2026年5月7日、EUがAI法の初改正案で暫定合意(デジタル・オムニバス)
- 高リスク規制は約16か月延期、合成コンテンツの表示義務、NCII/CSAM生成の禁止を追加
- 世界の規制はEUを参照する。方向性を知っておく意味がある
- AI生成物の表示を習慣化し、使わない用途を線引きし、「緩和でなく整理」と捉える
規制の動きは、AI活用を萎縮させるためのものではありません。誠実に、説明できる形で使う——その姿勢を先取りすることが、中小企業の信頼を長く守ります。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的・財務的・経営的助言ではありません。具体的な課題については専門家にご相談ください。